不安な状態の患者さんに誠心誠意関わることができ、生きる力、活きる力を得るのが看護の魅力


化学療法室
緩和ケア認定看護師


 
私は、子どもの頃から苦しんでいる人を見ると助けたいという気持ちに突き動かされるところがありました。正義感というほどのものではありませんが、例えば、中学生の頃、いじめられている友達がいると助けに入ってしまい、自分も一緒にいじめられるというようなこともありました。また、自分は何をしてもダメ、何も取り柄がないとコンプレックスが強いのは今も変わりません。でも、自分のことをわかってくれる人に巡り合うととても嬉しい気持ちになることに気づき、自分は人の話を聴くのが好きなので、その強みを活かし、相手から見て「わかってくれる人になりたい」と思うようになりました。看護師になろうと思ったのも、看護師をこうして続けているのもきっとそういう想いがベースにあるのだと思います。看護師の仕事ほど、普通に考えると当たり前のことをしているのに、こんなにも感謝される仕事はないと思います。それは、患者さんが不安な状態にある時に関わっていることが大きいと思います。その不安な状態の患者さんに対して、私たちは誠心誠意関わることができる機会があるのがこの仕事の魅力だと思います。仕事を通じて逆に生きる力、活きる力をもらえる素晴らしい仕事だと思っています。

がん患者の方の生きざまを受け止めることで、前向きな気持ちで生きてもらえる看護がしたい

私の看護師人生に大きな影響を与えたのは、がん患者さんとの出会いでした。カラダの痛み、吐き気、薬剤の投与などは治療に関することについては概ね答えることはできますが、「私がなぜがんにならなくてはいけないのか」という問いかけには適切に答えることができなかったことが私にとって大きな衝撃だったのです。それからの私は、がん患者さんの辛さを少しでも取り除きたいという想いにかられ、認定看護師の資格を取るべく勉強するだけでなく、死生観について考えるようになったり、コミュニケーションの方法など時間さえ見つかれば学ぶ機会を作っていました。患者さんは初めから私にすべて打ち明けません。ぽつりぽつりと話されていくうちに、生い立ち、価値観、ライフレビュー、職業のこと、日本を支えるような大きな仕事をしたこと、川崎の街への想い・・・を語り始められます。死は怖い、しかし、怖がっていても死は誰にでもあるものだと認識しされている患者さんに対して、患者さんの生きざまに触れ、受け止めて、寄り添うことで少しでも元気になってもらいたい、前向きな気持ちで生きてもらいたいと思い看護をしています。理想は患者さんと本当に通じ合いたい気持ちですが、少なくとも「わかってくれる人」でありたいと思っています。

私が、スタッフが、がん患者さん同士が、患者さんを「わかってくれる人」になれる環境づくりをしたい

私は患者さんと話をしたり、様子をうかがったりしている中で、いつも感じている二つのことをいつかは実現したいと思っています。一つ目は、患者さんが看護師と気兼ねなくしっかりと話せるスペースを作りたいと思っています。普段は、なんだかんだと人の出入りもありますし、他の人に話を聞かれたりすることも気になりますから、気兼ねなく看護師に話を聴いてもらえないと思っていらっしゃるようです。それを何とかしたいというのが一つ目の目標です。二つ目は、患者さん同士がもっと気軽に話せるスペースを作りたいということです。特に女性のがん患者さんは、お互いの情報交換が活発です。話をすることで同じ境遇の人同士、孤独感から解放され、仲間を感じることができ、やはり気持ちを前向きにすることができるようです。がん患者さんの不安は、私たちでわかるはずもない不安だと思います。でも、私が、スタッフが、同じ病を持つ者同士がそれぞれ「わかってくれる人」になり合える環境づくりにチャレンジしてみたいと思います。