「この人はきっと歩ける!」と介入前から退院後のADLが見えるようになり知った看護の楽しみ

主任

 
看護師になった頃は、同期の仲間に「患者さんに冷たいね」と言われていました。脳神経外科病棟で働いていましたが、同期の仲間は患者さんを『可愛い』だとか『愛しい』だとか言っていましたが、当初はその感覚がわかりませんでした。1年ほど経ち、ある患者さんとの関わりがきっかけで、看護の楽しみや喜びというものに気づくことができました。それは、高次脳機能障害や意識障害の患者さんとの関わりの中で、その人らしく退院後の生活ができるように介入していくことが大事であることを学べたことです。初めは私に寄りかかり、絶対に歩けないと思える患者さんでも、経験を積むごとに「いや、この人は歩ける、家に帰れる、食べることができる」と介入前から退院後のADLが見えるようになり、患者さんに必要な介入ができるようになってきました。その頃には、同期の仲間に「人と関わるのが本当は好きなのね」と言われるようになっていましたが、今、振り返ると、それぞれの人に、それぞれの関わり方ができる仕事だから看護師の仕事を続けているのだと思います。

スタッフにもその人らしさがあり、それぞれの成長機会を考え、看護の喜びを感じてもらいたい

私が看護をする上で大切にしていることは、以下の3つです。

  • 患者さんがその人らしく入院生活を過ごせるように環境を整え援助し、退院できるようにすること
  • ご家族が患者さんを見て安心できるような環境を提供すること
  • 患者さんの保清が保たれ、安楽に過ごすことができていること

看護の楽しみやこうした自分なりの看護観が醸成されたのも、先輩看護師からいろいろと教えてもらったからだと思っています。今、私は、主任としてスタッフをマネジメントする仕事をして1年3ヶ月が経ちます。主任になるまでは、例えば、落ち込んでいる後輩がいたら、話を聞いてあげるといった対応だけでも良かったのですが、今は、どうすればスタッフがやる気になり、パフォーマンスを上げていくかという視点で考えなければなりません。今のところは、私が先輩看護師にしてもらったように、少なくとも年下の看護師には看護の楽しみや喜びを感じてもらえるように、ロールモデルになりたいという気持ちで頑張っています。しかし、スタッフにもまた、その人らしさがあり、みんな私と同じではありません。経験年数の違い、持っているスキルの違い、それらを考慮してそれぞれの成長機会をどう提供していくかということが今後の私の課題と認識しています。

「自分のとっておきの看護」をお互い支援し合い、やりたい看護ができる職場にしていきたい

私自身の課題をしっかり認識したうえで、私は今いる職場を気持ちよく働ける職場にしたいという想いを持っています。思っていることが言える、やりたい看護ができる、そんな環境を作っていくことが私の役割と思っています。そのためにも、まず業務整理をきちんとしなければならないと思っています。負担が多いと、スタッフのモチベーションが下がるのは言うまでもありません。何が必要で、何が必要でないのかを整理することを常に意識していきたいと思います。スタッフがやりたい看護があるならば、それを実現できるように、他のスタッフが賛同する、手伝う、支援するような職場にしていきたいと思います。思っていることが言える関係が不可欠です。私は、職場でそれぞれのスタッフのナラティブ(語り)を共有していきたいと思っています。自分たちが、患者さんと関わる中で何を大切にしているのか、どんな時にやりがいを感じるのか、どんな患者さんにどんな風に関わったのかといったことを通じて「自分のとっておきの看護」をお互いに知り合うことで、それを実践できるような職場にしていきたいと考えています。