認知症の「人」に対して、尊厳のある対応で「その人らしく」笑顔で過ごせるようにしたい

認知症看護認定看護師

 
私が、大切にしていることは認知症の「人」に対して尊厳のある対応をして「その人らしく」笑顔で過ごせるようにすることです。認知症の人は、苦痛などを伝えることが困難な場合が多く、それが怒りや、焦り、多動などとなり「困った」人として対応されがちです。しかし、適切に対応すれば「その人らしく」生活を送ることができる、困っている「人」なのです。認知症看護を目指そうとしたきっかけは、新卒で配属された病棟で、当時の師長と患者さんとのやり取りの体験があったからです。
その患者さんは、認知症があり、緊急手術の後で身体から何本もの管が入っていましたが、怒りっぽく、常に落ち着かずに動いていました。いわゆる「困った患者さん」でした。自分が担当した日も同様に、「なによ!」と険しい表情で興奮しており、どうすればいいのか困惑しました。そこに、師長が訪れ「どうしましたか?」と自然に優しい口調と表情で患者さんの元へ行くと、ベッドサイドに腰掛けて会話をはじめました。すると、患者さんは「よく来たね。〇〇ちゃん」といって頭をなでました。患者さんが口にしたのは、娘さんの名前でした。師長は、否定や嫌がる様子もなく、ただ一緒に座っていました。数分経つと、患者さんの機嫌が良くなって、笑顔になったのを鮮明に記憶しています。その時、自分の中で「看護ってこういうことなのかも」と強く印象に残った出来事でした。
現在、チーム回診、病棟レクレーション、園芸療法、院内外研修会、地域施設や家族会と合同で市民公開講座など実践させて頂いています。今後は、認知症の患者さんだけでなく、その家族や地域施設との連携を充実したいと考えており、第一弾として「鋼管カフェ」開催の準備を行っています。