病棟1階のフロアはわたしにとっての『とっておきの空間』

看護管理室
十枝内 綾乃

 看護部長になり、看護の現場から離れた私にとって、日々のスタッフのナラティブが鋼管病院の看護を感じる手段となっています。そんな、間接的な看護でも多くの喜びや感動を共有できますが、唯一、直接的に看護実践が出来る機会が私にもあります。それは、看護部長室からトイレまでの数十メートルの道のりでの物語です。
 朝8時過ぎの病棟1階のフロアでは、不安げな表情の患者さんに多く出会います。私の『とっておき』はそんな患者さんにいち早く気づき、声をかけることです。声をかけられたときの、驚いたようなそして安堵したような患者さんの表情はいつも私を看護の原点に戻してくれます。検査室や受付などの場所がわからず困っておられる患者さんが殆どで、道案内をします。初めての胃カメラで緊張している方、家族が入院したと聞いてあわてて来院された方、それぞれの方に短い物語があります。ほんの短い時間ですが患者さんと会話をしながら歩くひと時を大切にしています。
 患者さんだけではなく、すれ違うスタッフへ声をかけることも同様です。表情や挨拶の声のトーンなどから、少し会話をしたり励ましたり時には笑わせたりスタッフを身近に感じられる瞬間は『とっておきの時間』です。逆に声をかけられ、元気付けられたり励まされたりすることも多々あります。どうやら病棟1階のフロアはわたしにとっての『とっておきの空間』になっているようです。