目の前にいる患者の思い、看護師に求めている事の大切さを気づけた瞬間

病院外来
鈴木 和枝

 就職して1年がたった頃、業務の中で患者の思いに気づき、その思いを理解しようと考えた場面があった。内科処置室で業務を行っていた。60歳台の女性に対して大腸鏡検査の予約と説明をした時だった。検査前にカルテで患者情報をとった。患者は2回目の検査であり、1回目の検査から1か月たっていなかった。この時なぜ2回目の検査を行うかカルテから見えなかったが、早く検査の説明を行わなければならないという気持ちが強く、患者を処置室へ誘導し机をはさんで座り検査の説明を始めた。「同じ検査をしたばかりなので、簡単に説明しますね」と伝えると、患者はうなずき、その後は淡々と説明する私にだまってうなずいて聞いていた。
 説明の半分が過ぎた時、患者から「また、この検査をして今日の様に、結果に愕然としなければいけないのかしら?」という言葉が出た。その言葉で一瞬説明をやめて患者を見た。患者は笑ってはいた。この時、私は目の前に座っている患者は、1回目の検査の結果に対して何か思う事があるのに、その思いを表出せずにいたのではと気付いた。検査の説明をやめ、今日診察室でどの様な事があったのか聞いてみた。患者は「前回の内視鏡検査の結果、ポリープの一部にがん細胞が見つかり、今回再度病理検査を行って確定診断をしていくとの事。まさかがん細胞が見つかるなんて言われると思わなくて‥」私はずっとうなずいて聞いていた。
 「悪い結果を言われるとは思わなくて、一人で来ちゃったし、一人で結果を受け止めてしまったし、私はもうどうすればいいかわからないわよ。」その後も患者の言葉は続いた。患者の言葉が止まった後、しばらく私はこの患者の状況、思いに看護師としてどの様に返していけばいいか考え、私の考えを伝えた。「大変な思いをしましたね。これからは、今の様に自分の思いを内に秘めずに、医師や、また大事な家族に話して下さい。一人で抱えず、これからの受診は家族と来るようにして結果も皆で受け止めていって下さい」この事だけ伝えた。「わかりました。でも旦那は気が小さいのよね。でも一人で悲しまない様にします。」と言い、立ち上がって処置室を出られた。
 この患者とのやり取りで私が一番考えたのは、途中であったが患者の気持ちをわかろうと気づけた自分がいた事だった。カルテの読みが不十分、説明業務を早くやらねばという自己中心的な思いなどいろいろ反省点がこの事例でも判明したが、目の前にいる患者がどのような思いを抱き、看護師に求めている事は何であろうと考える事の大切さ、気付けた自分が少しうれしかった。
 私はまだ業務をこなす事に必死である為に、この大事な部分に気付かない事が多い。今回の患者との関わりの中で気づいた大切な看護を、これからの業務の中で考えていけるようにしたい。