何か夢中になれることを見つけて関わっていきたい

地域包括支援病棟(2北病棟)
藤津 佳子

 A氏は2019年9月3日、4北病棟入院し点滴施行。しかし自己抜去を繰り返していたとのことだった。9月20日、2北病棟に転入後も、点滴自己抜去し食事や内服の拒否もあった。数日後より日中ナース室で過ごすようにすると、オーバーテーブルへ伏せるなどしながらも、通りかかった時など声掛けしていくうちに、穏やかな受け答えをするようになってきた。点滴は上肢にインサイトキープし、包帯で手背より上肢まで巻き、パジャマの袖も手が入らないようにテープで固定し、遠目で包帯が気になるような行動となった時は声掛けするなどし、気をそらすようにしていた。しかし包帯を外してしまう事も多く、外しはじめると無理に駄目だと言わず可能な範囲で修正し、抜針までは至らず終了できることが多くなった。
 ある時外した包帯を端より両手でくるくる巻いており、その時はとても集中していた。A氏に「綺麗に巻けましたね。器用なんですね。なかなかこんなに隙間なくきっちり巻けませんよ」と声をかけると、とても嬉しそうにしていた。他のスタッフともA氏は器用だというような話をしていると「編み物が得意で娘が小さい時はベストや帽子も編んでいたのよ」と話された。数日後、夕食時に娘さんが来棟し「編み物が好きなんですってね。ほどいた包帯を綺麗に巻いていらしたので」と声掛けすると、娘さんも嬉しそうにA氏がいろいろ編んでくれたと話された。そこで、もし自宅に以前使用していたような毛糸などがあれば、巻くだけでも楽しい気持ちで過ごせるかもしれないので持ってきて欲しいと依頼した。編み棒はひっかかるなどすると皮膚損傷になる可能性もあり、とりあえず毛糸のみがいいのではと説明した。
 後日、ピンクや赤の毛糸玉を持参され、A氏はくるくる巻いては解き楽しそうに過ごされていた。せっかく用意してもらってもあまり興味を示さなかったり、ましては買ってもらったものが合わなかったりすることも多々ある。娘さんもA氏の拒否的な行動に、申し訳ないといった印象であったが、パッと明るい表情となり話をされ私も嬉しくなった。 そして何よりA氏との話のきっかけとなり、穏やかに過ごされ退院できた。
 これからも患者様それぞれの「何か夢中になれるもの」をみつけられるよう関わっていきたいと思う。