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患者様をよく観察し、予測をたてて看護を提供したい

透析センター 今野美登利

 私が普段看護するうえで意識していることは、患者様をよく観察し予測をたてて看護をすることです。私が新人の頃、先輩看護師から「患者様の気持ちや行動を予測して、先回りできるような看護をしなさい。患者様がナースコールを使わなくても良い看護をしなさい。」と指導されました。例えば患者様に点滴を行った時は、滴下速度や残量・刺入部観察はもちろんのこと、点滴の後は尿意が起こる事も予測して環境整備や排尿誘導を行うのです。患者様のこれから起こり得る行動や思いを予測し、看護師側からアクションを起こす事で転倒等の事故防止や、ナースコールで排泄を知らせる羞恥心に配慮することができるのだと学びました。

 透析室はワンフロアに患者様とスタッフがいる環境なので、基本的にはナースコールは使用していません。このような環境で、患者様をよく観察し予測をたてて看護することはとても重要であると感じています。透析中は患者様がスタッフに気兼ねなく声を掛けられるように常に巡回を行っていますが、患者様がスタッフに遠慮して声をかけづらい事もありますので、患者様の表情や仕草をよく観察し、眉間に皺がよっていたりどこかさするような動作があれば痛みの存在を予測して「どこか痛みますか?」などの声をかけるようにしています。病棟では患者様のそばで常に観察して援助することは難しいですが、透析室ではそれが可能です。その環境をいかし、患者様が安心して透析を受けられる看護を提供できるように努力しています。

 今後は更に患者様の満足度が高まるような看護の提供のために、患者様の心理理解を深められるような文献学習などを行いたいと考えています。

患者さんと深く関わるためにも、病棟看護師の情報共有を大切にしたい

手術室 黒澤小織

 私が手術室看護師として患者と関わる際、先輩看護師から言われてきたことは病棟看護師との情報共有の重要性についてだ。そのことを実感したのは当時働いていた病院で緊急手術にて気管切開を行う患者を受け入れた時だった。患者入室前に電子カルテで情報収集をし、医師との電話連絡で患者本人、家族からの同意を取れたことを確認し、手術の準備をしていた。実際に患者を受け入れて、病棟看護師から申し送りを受けたときのことだった。「Aさんはタバコを吸う事が大好きで、家族と会って話をすることを楽しみに入院生活を送ってきた。あまり家族と話せないまま手術室に来てしまった。」このような情報を病棟看護師に教えてもらうことができた。

 手術室の中だけでは患者と家族の関わりや日々の様子などは電子カルテ上や術前訪問、入室前の関わりだけで知ることはどうしても難しい。“本当にこのまま手術をすることが患者にとって最善なのか”“会話が難しくなる前にもう一度家族との時間を楽しみたいのではないか”と自分の判断に迷いながら先輩看護師、病棟看護師と相談し、医師の許可を得て、再度本人・家族の意志を確認し、少しではあったが会話をする時間を設けることができた。

 この出来事があってから、病棟看護師から教えてもらえる「緊張している様子でした」「家族と話して笑顔も見られました」等の患者の普段の情報を得る事の大切さも意識するようになった。日々の業務や忙しさに追われてしまいがちだが、術前訪問の際に看護師ともコミュニケーションをとることを心掛けて患者との関わりを深めていきたい。

誰にとっても安心でき、心地よく、安全が提供できる場所でありたい

救急外来 主藤 友佳

 入社して3ヶ月過ぎようとしていた頃、日々慌ただしく過ごしていた。そんなある日「よっ、だいぶ調子いいよ。助けてくれてありがとう。あん時はどうなるかと思ったよ。」と前方から手を振り笑みを浮かべ歩いてくる患者。歩行の足取りもしっかりしている。

 とある正午、ふと救急室へ歩いていると顔面蒼白で倒れ込むように駆け込んできた一人の男性。急患であることはひと目でわかった。びっくりしたとともに、「何とかしなくては・・・自分にできることは・・・」と考え、頭の中をフル回転させた。バイタルを取り、検査に回った。相当痛いはずなのに話しをやめない。冷や汗かきながら「俺の病気は何だ?何でこんなに痛いんだ?」と話してくる。不安でいっぱいなのであろう、そんな患者の話を聞くことしか出来なかった。

 救急外来は急性期の場であり、短時間での情報収集と共有、そして迅速な分析が求められる。患者は精神的にも身体的にも苦痛を伴い、心身が不安定な状態では簡単にそれらが増幅してしまう。日頃からそんな状態を一刻も早く解決、緩和したいと思い対応している。日々患者に関わる中で、患者だけでなくご家族、付添の方も不安を抱いている事が多い。そのため声をかけやすい雰囲気作りや積極的な声掛け、落ち着いて話せる環境作りに努め対応している。救急外来での受診が一度きりかもしれないが、「ここ(病院)に来てよかった。何かあったらまたここで診てもらいたい。」と思ってもらえる、誰にとっても安心できる場所、心地よい場所、そして安全が提供できる場所でありたい。そんな場所が自分の職場であったら素敵だと思う。今後はさらに迅速かつ的確な対応ができるように、技術や知識の向上と周囲への気配りや感謝を忘れず、日々頑張っていきたい。

内視鏡検査をトラウマにさせない

外来統括検査 佐藤 絹子

 看護師として、消化器内視鏡技師として、特に大切にしていることは、初めて検査を受ける患者さんを内視鏡検査をトラウマにしないということです。対策型健診にも食道・胃・十二指腸内視鏡検査(EGD)が導入され、より身近な検査となっております。私が初めてEGDを受けている患者さんを見たのは、看護師になり5年目のことでした。目の前でこんなに苦しがっている人を前に、「私は何ができるのだろう・・・」という強い衝撃は、今でも忘れられません。

 その経験から10年経ち、内視鏡検査・治療に係るようになりました。そして、私自身も健診で21回ほどEGDの経験をしました。何度経験しても緊張感と不安感は消えないものです。“患者さんの気持ちを忘れない”という思いで受けてきました。特に初めてEGDを受ける患者さんは、疾患への不安はもちろんのこと、苦しいつらい検査というイメージが否めない検査です。緊張と不安でいっぱいになって検査に望まれる方がほとんどです。初回検査の方には、「少しでも楽に受けられるコツをお伝えしますね」と前置きをして、検査のための内服薬の目的、検査の流れ、検査を受けるコツ(呼吸の仕方、のどの違和感と唾液の出し方)を説明します。COVID-19の感染拡大前には、のどに手を当てこんな感じになりますと、実際に咽頭の違和感をイメージしていただきました。検査ベッドでシムス位になり、衣服が汚染されないよう襟元のシートの一にも注意を払います。咽頭麻酔が効いてきたらいよいよスコープの挿入です。肩や背中に手を置いてタッチングを行います。タッチングは、安心感と不安の軽減に有効な手段です。食道に挿入されるまでが一番の難関です。医師とともに声掛けをしてスムーズな挿入へ導きます。食道・胃・十二指腸と観察をしていきますが、要所、要所で顔の位置を整えたり、呼吸の仕方を促したり観察場所を伝えたりしながらスムーズな検査へと導きます。上手にできていることは、ほめて承認します。緊張で唇が小刻みにふるえている人、指がこわばっている人、不安で看護師の手をギュッと握る人もいらっしゃいます。検査が無事に終わり涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃになった顔を拭くころには、患者さんも緊張感から解き放れ安堵感がみられます。「上手にできましたね。よく頑張りましたね。お疲れさまでした。等々」ねぎらいの言葉も忘れません。

 先日、39歳男性 初めてのEGD。横になったとたん「だめかもしれません」とマウスピースを持ち上げ起き上がろうとしました。ここでやめたら、内視鏡検査ができなかったら今後受けてもらえなくなるかも…と思い患者の不安感を受容し、一度だけ挑戦してみましょうと促し医師、看護師、臨床工学技士で、温かく見守りながら挑みました。結果は、嘔吐反射もなくスムーズに検査を終えることができました。無事に検査を受けることができた喜びは、患者さんと同じくらい私達も嬉しく思います。短いかかわりの中ではありますが、一人一人を大切に、五感をフル活動し、言葉やしぐさから不安や恐怖を察知し、手で、言葉でスムーズな検査へと導く内視鏡看護を極めていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症と向き合って看護していくこと

外来統括外来 江頭 直子

 今年に入ってから新型コロナウイルスの影響によって今までに経験したことのないような生活環境の制限が私達の生活に変化を与えた。あたりまえのように友達と会っておしゃべりしたり、仲間と食事を楽しんだり、みんなで大きな声で笑ったり、そんな普通の事ができなくなった。病院においても発熱患者は通常では診療できなくなり、診療すら断る医院もある。そんな中、こうかんクリニックでは、今現在も発熱患者の感染対策を行いつつ、診療が無事できていることが有難いことのように思える。

 こうかんクリニックは地域密着型で、小児から成人になっても、また親となって子供も含め家族で継続的に通院されている方も見られる。鋼管病院やこうかんクリニックのスタッフが親近者のような関係になっている患者さんも見られる。近年さまざまな新型ウイルスの脅威にさらされ、私達医療者もその中で仕事していく葛藤や困難に多く直面している。しかし、どのようなウイルス感染症の患者であっても私たちの行っていく看護は変わらないと思っている。発熱外来が始まった当初、患者さんは不安そうな表情をしたり、苦しそうな様子の患者さんも見られたが、その中でも私たちに「大変な仕事ですね。」「ありがとうございます。」など温かい言葉を頂いたこともあった。新型コロナウイルス感染症が特別なのではなく、患者の今つらいと思うことは何か、病気によってどのような状態にあるかを的確にアセスメントし、医療スタッフと協調しながら関わっていくことは変わらないことである。私達、医療者の仕事は特別変わらないのに世の中の人に今までになく多くの感謝と励ましや頂き物も受け大変有難いことである。ただ、今までと少し異なってしまうことは、いつもよりコミュニケーションを取りづらい状況となってしまっていることである。会話も必要最小限となっているが、せめて気持ちだけでも患者さんに寄り添った看護が伝わるよう心がけていきたいと思う。

 まだこの状況は続いていくのかもしれない。さまざまな職場の会議や研修会などもほぼ中止になって、多くの人と直接集まる機会も減り、いろいろな場での従来のやり方にも見直す機会を試されているのかもしれない。しかし、今の困難も前向きにとらえ、いつかこの状況を振り返る日には‘あの時はこんな事は大変だったけれども今こうしていられて有難いし、こんな気づきもあったよね’と振り返れる日がくるといいなと感じている。また、この状況が収まった頃には研修会などの再開ができれば、効果的な患者指導について、コミュニケーションの良好なとり方など参加し、基本に戻り深めていきたいと思っている。そして、新型コロナウイルスで亡くなられた方を弔いつつ、みんなが以前のように対面で笑いあえることを願っている。

看護師として信頼感を得るということ

5北病棟 能登今日子

 私は看護師になってから、患者の思いと医療者の考えが合わないという場面をよく目の当たりにしていた。自分自身でもそのことを実感することがあり、患者の気持ちがわかるからこそ、そのジレンマに悩むことが良くあった。今回の出来ごとで、医療者の考えをただ説明するだけでわかってもらうのではなく、日頃の行動を見てもらうことが看護師としての信頼感を得て、医療者視点の考えをわかってもらえると実感し、学ぶことができた。

 認知機能は問題なく、元々の性格がはっきりとしている患者M氏がいた。M氏は痰量が多く、1~2時間おきに吸引を行なわなければならなかった。吸引自体も気管まで吸引チューブを入れなければならず、1回の吸引自体の時間も長いこともあり、つらさを耐えきれずに、吸引前に必ずM氏は看護師へ悪態をついていた。そのこともあり、M氏を受け持つことを嫌がる看護師は多く、私もその一人だった。吸引自体が苦しい処置であるということはわかっているつもりで行なっていたからこそ、その悪態がつらく逃げ出したくなることが多かった。M氏を受け持つことが多かった時期に、「吸引がつらいという気持ちはわかるのですが、痰をとらないと窒息を起こしたり、肺炎が悪化したりしてMさん自身がとても辛い思いをしますよ?Mさんが毎回つらいことを私達に言うので、こちらもつらくなってしまいます。」と強い口調で伝えてしまったことがあった。言ってしまったと罰の悪い思いをしていると「医者でもないくせに、適当な事言って」と言い返され、そもそも私自身が信頼されていないのだと実感し、更にショックを受けた。その後M氏は退院し、再び入院をしたため、5北病棟では長期間の入院生活を送ることになった。その後もM氏を受け持つことには抵抗があった。しかし、日を追うごとに悪態をつく回数が減っていった。M氏自身の調子が悪くなっていたこともあったかもしれないが、それでも私達の処置を嫌がらなくなった印象があった。そして、別のスタッフからM氏が私に対して「昔言い合いをした人。でもあの人、きちんとやってくれるのよね。」と言っていた事を教えられた。私は、新人の頃に先輩から、「その日の受け持ち患者をみて、ただルーチンでやらなきゃいけないことをこなすのではなく、1個でもいいから患者自身のために自分が今日出来ることは何があるかな?と考えてやると看護師らしい仕事ができるんじゃないかな?」と言われたことがあり、その考えをとても大切にしていた。M氏に対しても、口の中がかなり痰で汚れているから今日1日できれいにしよう、排痰ケアをして、痰をとりきればM氏の呼吸は楽になるだろうから、きちんと説明をして痰をしっかり取りきれるようにしよう、などルーチンの仕事だけでなく+αのことができるように意識して介入するようにしていた。当たり前のことであり、小さなことだが、そのことでM氏から先ほどのような言葉聞くことだでき、以前のように吸引前の悪態を聞くことがなくなったのではないか?と思った。

 今回の出来事から、看護師としての日頃の行動を患者は見ており、その結果信頼感を得ることが出来、その信頼感があるからこそ「患者にとってつらい処置」や「医療者にとってしか必要性が感じられないこと」で、しかし「どうしても必要であること」を、患者に理解してもらえることもあるのだと感じることができた。

自然治癒力を最大限に生かせるように援助していく看護

5階南病棟 高木桜子

 私は患者さんの自然治癒力を最大限に生かせるように、援助していくことが看護として大切にしていることである。オーバーナイトで肺腺癌ステージ3aの喀血を主訴に入院したA患者との関わりで、最期の人生に対する「生きる希望」について語った場面での出来事である。A氏は入院時から、PLT低値であったため、血小板を緊急で投与、また血痰著明、咳嗽あり。ティッシュで血痰を自己排痰していた。夜間も血痰によりほぼ熟眠できておらず1-2時間おきに覚醒しているようだった。しかし、朝方になり血痰が少し落ち着き、A氏のところへ訪室すると、本人が今までの思いを表出したため、ベッドサイドで傾聴することとなった。

 A氏の肺癌と告知されたのは2019年9月。最初は右胸の疼痛で整形外科を受診。しかし整形外科的には、異常は見当たらず、その後も疼痛が持続したため、他院に受診し、そこで初めて癌であることを宣告された。最初は動揺をしたこと、放射線治療と化学療法が始まり、放射線治療は30回程度実施し、先生からは「その調子ですね。」と声をかけてくれたが、どの程度まで限局したのかわからなかった。また化学療法も始まり、何よりも副作用による脱毛や便秘など副作用が心配だったとのこと。治療が進み、気持ちが整理つかず受容することが時々困難だった。本当によくなっているのだろうかと不安に思うようになった。今回の病院への緊急受診は、A氏が病院に行くことを拒絶したが、妻に連れられた。今回の入院が最期かもしれない。特にやりたいことはないけれど、まだこの世にいたい気持ちはある。好きなことはドライブ、旅行と歌謡曲を歌うこと。奥さんに本当に今まで迷惑かけた。だから、退院したら奥さんとドライブとか旅行したい。と思いを表出されたため、看護師からも、希望や気力をもつことは大切ではないかと伝えると理解された様子だった。

 しかし、日中になると、A氏は突然、発汗著明・顔色不良になった。EMコールが鳴り、他スタッフが駆けつけた。急いで気管支鏡をすると血餅が詰まり、窒息していた。急遽、挿管され人工呼吸器に繋がれることとなった。処置が落ち着き、ようやく意識を回復したが、挿管管理となったため、発語できない状態となった。処置や治療が一通り終わり、医師から妻へIC後、A氏の居室でようやく妻と面会することができた。妻は大変動揺し流涙している姿がみられた。本人が朝方訴えたことを、伝える必要があるか、悩んだが、きっと伝えることでA氏と妻と何か架け橋になれるのではないかと思い、他看護師に相談し伝えることとなった。A氏に声をかけると覚醒したため、本人の思いを伝えてもよいかどうか伺うと、突然目を開き、「うん。」と頷いた。A氏が寝ているベッドの前で、私は妻にA氏がもうこれで最期かもしれない、妻に迷惑かけたこと、もし退院したら歌謡曲を聴いたり、一緒に旅行やドライブ行きたいと生きる希望と理由を伝えた。すると、妻は「あら、そんなことを言っていたんですねと、本人は我慢強いところがあって、なかなか本音を言わない。だから、時々心配になっていた。」と涙ながらに応えられた。そして、私は何かできないかと思い、妻に手を握るようなタッチングケアを導入した。

 今回の事例を通して、A氏の思いを傾聴し、妻への感謝や治療に奮闘されながらも生きる希望があること、そしてその思いを妻に伝え、妻へのケアを導入できたことは、当事者だけでなく、家族を含めて看護できたのではないかと考える。また、看護師としてではなく、一人の人間として多く学んだこともあった。それは、「人はどう死ぬかよりもどう生きるか。」ではないかと思う。

拒否のある患者さんとの関わり

4階北病棟 松岡 七恵

 コロナ渦で家族の面会禁止の状態もあり、余儀なく入院された患者さんは不安も強く過ごす一年だったかと思う。今回は、認知症で腰痛から体動困難や、看護や内服や食事の拒否もあった患者さんと関わった。しかし、日々の関わりの積み重ねから、私達の看護を受け入れてもらえるまでになったので様子をお伝えする。

 その方は入院が人生で初めてで、夫と長く、介護サービスを導入することも無く、閉鎖的な環境で在宅療養をしてきた。入院当初は、一人で人気もなく寂しさが募ったときはベッドサイドで起き上がり、「何故ここに私は居るのか、ここは何処なのか、家族は自身が入院していることを知っているのに何故来ないのか、今すぐ帰らないと。」「そんな訳の分からないもの(薬は)飲めません。要りません」「いや」「やめて」「なぜ、無理やりそうさせるの?」など拒否的な言葉が続いた。安静を保てず痛みが増す、痛み止めを飲まない事で痛みが増すという悪循環を招き、医療者としては不安や痛みから心身の状況が悪化しないか、私は焦る気持ちが先立っていた。しかし、こんなときこそ、こちら側の焦る気持ちが伝わってしまったり、互いが感情的になると悪循環を生み出してしまうと考え、深呼吸し自分の感情をリセットさせることを意識した。自身の感情マネジメントをすることは、自身のこととなると難しい。自分の課題でもあるなと自覚し、より良い関わりはないか考えて関わった。

 工夫した関わり方は、ときに無理強いせず、安全確保できている事を確認して一旦は退室し時間を5分以上おいて、また話をしてみる。そして、認知症患者さんにはできるだけ、不快であるという印象を残さないように会話の言葉を選んだ。また、もし自分が患者さんの立場なら同じような気持ちになるだろうなと想像を巡らせ、共感もしながら関わった。他には、他の患者さんが、安心して内服する、食事をしている場面を見てもらった。今の状況は何度も聞かなくても、あーそうかと目にした患者さん自身がわかるようにマジックペンで大きめな字でお手紙を書いて、ベッドサイドに貼った。それでも、また聞かれたときはお手紙を一緒に読めるように活用した。意思疎通も通わせることはもちろんだが、今日はどんな様子なのか今知りたいというお気持ちを汲み取りながら、電話越しであるが家族と会話してもらった。

 認知症回診の医師の勧めもあり、片手で抱ける、ぬいぐるみを専用で使用してもらったりした。寂しさが急に強くなり、涙されるときは、一緒に散歩したり、常に誰かがいる環境の、看護室に来て時間を過ごすなど、場所を変えて気分転換を図った。手持ちぶたさがありそうだと感じられれば、軽作業をお願いしてみたりした。

 ある日の、その軽作業の出来上がりは、とても綺麗で、その患者さん本来の、生活力の高さに驚いた。私が出来上がりについて「お見それしました。ありがとうございます」と感謝すると「私は大したことはできませんがね、私でもお役にたてているでしょうか。こういうこと、嫌いじゃないんです」とお元気であったであろう頃を伺えるような返答が帰ってきたりして感動した。患者さんの自分自身の話題を聞かせてもらうことも、初めてであったし、そのような一面があるのだと驚いた。その後は、「忙しそうね。ありがとう」 「あー良かった、気持もよかったよ」 と笑顔も見られるようになった。入院直後は痛みや不安で混乱した気持もでいる患者さんだったが、日々過ごしていくうちに安心感も生まれ、ここは悪いところではないようだ。医療者もよくしてくれる人たちなのだと感じてもらえるようになると内服拒否もなくなり、食事も3食できるようになった。痛みが和らいでいくとともに気持も平穏になっていったようだった。

 拒否のある患者さんには関わる時間やスキル、マンパワーも、一般の方より必要になるが、医療者の行為を受け入れてくれるように少しずつなると、強い喜びも感じることができた。根気も必要であったが報われることができ、互いに心からの笑顔で笑い会える瞬間もあった。厳しい状態が続く一年だったが、患者さんから力をもらえることもあるなと感じ、看護とはそのようなやり取りができるから好きであると改めて感じることができた。そうおもわせてくださったA氏には感謝したいと思った。

初めて入院する心配事の傾聴、納得して入院生活が送れる看護をしたい

4南病棟 白鳥 未来

 入院する人は病気や怪我で治療が必要となり、またそれがはじめての事となると不安や心配事は個人によっても(発達段階によって身体的・精神的・社会的にも)違う。これから行われる治療・処置・痛みを伴うのかなど知らない事が多いからこそ不安が大きくなる。そのため私はその不安、心配事を傾聴して分からないことがないように、患者自身が治療を理解して納得して入院生活が送れるような看護を大切にしている。

 春頃に入院してきた50代男性は初めての入院・手術で、妻に付き添われ入院。妻が居る時は「不安などない、大丈夫。直ぐ終わることで俺は寝てればいいんだから」と、話していたが、妻が帰宅すると不安そうな顔をされ、私の説明で何か分からなかった事があったのか?不安気な顔が気になり、どうしたのか尋ねると、最初は言いにくそうにしていたが、「実際は緊張しているし、何をされるのか、自分は何をしていいのか分からずどうしたらいいのか考えていた。」と話された。「いい年をしたおじさんがこんな事言うのも恥ずかしいから言えなかった。」とも話された。ストレス対処には個人差があり心配事を人に話せる人、話せない人、人からどう思われるのかが心配で本音を言えない人など様々である。初対面の人に自分の心情を話すのにも勇気がいる。

 自分の気持ちを語ってくれたことで、何が不安で心配なのか。わからない事は何か?を手術・入院生活に関する事について患者に確認しながら術前の身体の準備、処置内容、手術室入室から、麻酔からの覚醒時にはどのような状態にあるのか等、具体的に一連の流れに沿って説明した。説明後には笑顔になり、不安気な顔は見られなくなった。手術日は受け持つことが出来なかったが、退院日には受け持ち、その時に「入院日にあなたが担当で良かった、話をして良かった。ありがとう。」と笑顔で退院された。

 この経験は患者の不安気な非言語的状態をキャッチして傾聴姿勢を示したことで患者との良好な関係が築けた嬉しい体験であった。不安や心配事はだれにでもあって、まして初めての事に対して人は不安も大きくて、その不安はこれから体験する出来事を前もって説明を受けて理解していることで不安も軽減する事ができる。私が担当している診療部署は多岐にわたる発達段階の方が入院してくる。入院となった経緯も違うため、個別性に合わせた看護・援助に努めながら初回・再入院に関わらず、不安なく入院治療が送れるように傾聴を大切にしながら関わっていきたい。

患者体験して・・・

3北病棟 菅野真希

 私は普段、自分が患者側の立場だったらどうか…。ということを意識して患者さんとコミュニケーションを取っている。それを考えるようになったのは、私自身が手術や出産などで入院し、実際の患者になったとき、看護師からの言動が患者に多少なりとも患者−看護師の関係に影響することを感じた。例として、術後の創部痛や陣痛が辛くて苦しんでいる中、一人の看護師から心無い言葉を掛けられ、私はその看護師を信頼しなくなった。別の看護師は、短時間でも私の傍に寄り添ってくれたことや、少しでも痛みを和らげようと必死に動いていたのを見ていたので、気持ち的に楽になったことを記憶している。私自身が患者になったことで、患者は看護師をよく見ていることに実感し、そして「私は普段から患者さんに丁寧に接していたか。」など自分の行動を振り返るきっかけとなった。

 それからは実際に、術後から不眠を訴えていた患者さんを夜勤で担当したとき、患者さんは終始、表情が暗かったため本人と相談し早めに消灯した。夜間、訪室時には入眠していたが中途覚醒があったため、少しでも寝る時間を増やしたいかと考え、朝の電気付ける時間を1時間ほど遅らせてみた。すると朝のラウンドで「よく眠れたよ、気遣いありがとう。」と表情が明るくなっていた。また、初めての検査や手術などで緊張していた患者さんを日勤で担当した時には、今日一日のスケジュールを細かい所まで確認するなど配慮した。私自身が意識して行動変容したことで、以前より患者さんの笑顔が増えたように感じる。患者さんの笑顔は私自身にも忙しい業務の中での大きな励みになる。

 これらの経験から、今後も患者さんの立場になり看護師としてどう行動するべきかを考え、患者−看護師間の信頼関係を築いていきたい。